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二浪日記246滑り止めの267伝え方268○○にもマケズ269二日続けての不合格

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246話 滑り止めの合格発表

私は意を決して、イチローの合格発表を見ようとしていた。 ほんの2メートル足らずのところにいるイチローに、 合格発表を見ていると悟られないようにパソコンを操作いていた。 まず、センター試験を受けた会場番号と センター試験の受験番号を入れ パスワード代わりの誕生月日を入力すると 受験票がダウンロードできた。 そこにある受験番号を書き留めて 合格発表のサイトへ行く・・・。 胸は締め付けられるような苦しさを通り越し まるでえぐられるような感じがする。 ため息と一緒に息を吐き出さないと 吸うこともできない。 私は声を出さないように、何度かため息をつく。 いくら平静を装ってみても 手がどんどん震えだす・・・。 本当にブルブルブルブルとマウスを持つ手が震えていた。 (こんなに動揺しなくても・・・) 自分でも少し呆れる。 私は胸に手を当てて、目を閉じだ。 そして心の中で 「大手三大予備校がそろってA判定だったんだから。 大丈夫、大丈夫。きっと大丈夫。 二つあるうちの、一つの方はきっと・・・。」 そう自分に言い聞かせる。 私は二つ出願したうちの、可能性の高い方の学科から 見てみることにした。 私はゆっくりめを明けて、 ダウンロードしたばかりの受験番号を慎重に入力する・・・。 息も絶え絶え、とはまさにこのことだ。 あまりに右手が震えるので一度キーボードから手を放して、 自分の左手で握るようにさすってみる。 そしてもう一度行きを吐く・・・。 ここでもパスワード代わりの、 イチローの誕生月日4ケタを入力する。 あとは確定を押すだけ・・・。 怖い。 押せない。 えい、押すんだ。 ・・・怖い・・・。 えーい! 私は一瞬目を閉じてクリックした。 するとパソコンの画面が瞬時に切り替わる。 そこには桜のイラストともに 合格おめでとうございます の文字があらわれた。 ああ。 ああ。 受かってた。 3年間大学受験をやって初めての合格の二文字だった。 私は凍った心がとけていくような やっと楽に呼吸ができるような そんな気がした。 桜のイラストと「合格おめでとう」の文字 こんなにうれしいパソコン画面を見るのは 中学受験の合格発表以来かもしれなかった。 もう一つの方はどうだろう。 今合格を確認したのは 私が保険の意味で追加出願したところだ。 一度完成した出願書類を修正液を使ってまで書きなおして あとから追加した、あの学科だ。 滑り止めの滑り止め・・・。 心のお守りとして。 イチローが自ら滑り止めとして選んだ もう一つの方はどうなったか。 そちらは、予備校のセンター判定もあまりよくなく、 B判定という予備校と、C判定という予備校に分かれ ボーダーは超えているものの、 合格可能性60%~ という感じだった。 どの予備校の判定でも A判定プラス10点以上は超えていた今確認した学科と比較すると、 かなり厳しい状況に思える。 悩んでいないでささっと事務的に確認してしまえばいいものを 私はまたドキドキが止まらない。 今度は手が見た目にもはっきりとわかるほど ぶるぶると震えだす。 画面を開く勇気がなかなか出ない。 はー。  私は息を吐いて気持ちを決める。 こんなことしてても仕方ない。 行くしかない。 私はさっきやった入力行為を繰り返す。 結果はもう出ているんだ。 受け止めるしかないじゃないか。 一か八か・・・。 イチローの誕生月日を入れてクリックした。 合格おめでとうございます さっきと同じ、桜のイラストと一緒に 明るい画面が再び現れた。 はー・・・。 よかった。 こっちも合格していた。 私は首をカクンとまげて、安堵感を味わった。 そしてしばしフリーズした。 そして何度も、何度も、ちゃんと両方の学科に合格していることを確認する。 ○学科と、◇学科・・・。 間違いない・・・。 イチローに教える前に、何度も。何度も見直した。 ぬか喜びをさせるわけにはいかないからだ。 数分経っただろうか。 私はちょっと上ずったような、 腰が抜けたときに出すような、 何とも言えない声で ソファに寝そべっているイチローの後姿に声をかけた。 「イチローくーん。」 「え~?」 イチローはTVを見たまま生返事をする。 私はそのまま伝えた。 「両方とも受かってたぁ~・・・。」 「え?」 イチローはこちらを振り返ろうとして ソファから転がるように下りた。 まさか私が確認しているとは 思っていなかったイチローは 私の言葉の意味を理解するのに一瞬の時間を要した。 そして 「ホント?マジで?!」 と言った。 「マジで。」 と私が言うと、パソコンの方へと飛んできた。 私はイチローの方へパソコンの画面を向けてやる。 「ほら、合格おめでとうって!」 イチローは嬉しそうに 「本当だぁ~!やった!合格した!」 と声を上げる。 それは私が想像していた以上の喜び方だった。 私は 「ほら、こっちの学科もちゃんと。」 と言ってもう一つの確認画面に切り替えてやる。 そして、 「ほらここ、こっちは○学科、こっちは◇学科ってなっているでしょう?」 と見方を教えてやる。 「本当だ!ちょっとよく見せて。」 私はイチローにパソコン前の席を譲ってやった。 画面を見ながらイチローは 思いがけないことを口にした。 「やった!・・・大学って受かるんだね・・・。 大学っていくら受けても合格しないのかって思ってたよ。 よかった。これで、三浪はなくなった。 大学生になれるんだね・・・。」 大学はいくら受けても合格しないのかと思ってた、って。 そこまで思い詰めていたのか。 確かにミスばかりくりかえして、解けたはずの問題で得点できず 偏差値はいつも低いまま。 あんなに勉強して、T大の問題もK大の問題も解けるのに なぜか偏差値30台をたたき出してしまう、 障がいレベルのミスキングなんだもんね。 思い詰めるのも無理はないか。 この大学は私はなかなか好きな大学で、 滑り止めにできる中ではピカイチだと思っている。 でも、現役の時に推薦で行けたところだし、 去年だってセンター前期で出願していれば 取れた大学なのだった。 だから二浪の今、 ここまでイチローが喜ぶことを 私は想像できずにいたのだった。 そこへパパるがコーヒーを入れにやってきた。 普段必要最低限以外に会話のない父子だが イチローがパパるに 「○大受かった。」 と報告した。 すると 「なんだって?本当か!やったな!」 パパるはわざとらしいセリフを吐く。 (イチローの進学なんてどうでもいいと思っているくせに。わざとらしいわよねぇ) 私はこのとき本当にそう思っていた。 パパるはイチローが見ているパソコンの画面を イチローの後ろに立って眺めて、 「よかったなあ」 と言う。 そしてイチローの頭に手をやって 髪をくしゃくしゃにした。 その手には結構力が入ってるようだった。 (もう子供じゃないんだから、そんなことすると嫌がられるわよ。) 私はイチローがパパるの手を払いのけやしないかと ハラハラと見守った。 パパるは「よかったなぁ」を繰り返しているうちに 鼻をすすり始めた。 え?  泣いてる? 息子の受験になんか何の興味もありませんってスタンスを取り続けていたパパるが泣いてる? 心配してたの? パパるは鼻をすすりながら、自室へと消えた。 残された私とイチローは 意外なパパるの行動に思わず顔を見合わせた。 外は今にも雪が降り出しそうに冷えている。 でもウチの家族の心の中には 希望の桜が咲き始めていた。 滑り止めに合格しただけでこんなに騒ぐのウチだけよ

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