有料記事

ほんの景気つけ…されど覚悟を決めて…!(前編)

1

20人以上が購入

【※注意:こちらは一部の方に向けた(断髪)擬似小説です】 メリークリスマス♪🎄 やっと仕上がりました。 今年10月から公開してた「ほんの景気つけ…されど覚悟を決めて…!」 作品自体は最後まで書ききってるのですが、校正作業が追いつかず途中で更新ストップしてたのですが、12月中旬頃に全ての作業+あとおまけ制作も終わり、 クリスマス記念として、今日公開することにしました♪。 今回は何万字とすごい規模になってしまったので、現在公開してる分合わせて、前編/後編に分けて公開します。 後編は29日公開予定です。 またブログには6話までは公開したままで残してあります。 REQUからご覧頂いた方は、こちらで6話まで是非お読み頂いてからご購入を検討してみてください🙇‍♂️ ※REQUの無料範囲は文字数制限の為、4話程度まで ↓前編分の設定紹介もこちらへどうぞ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今回は販売価格(294円)ー手数料(24円)=250円 という価格設定です。 いつもと同じ値段にさせて頂きました。 前編は、計43672字・5164行。 (※うち非公開の7話以降は25000字程度) 【完読所要時間は90分程度】です。 クリスマスから年末年始にかけて、 ゆっくり読める時に楽しみいただければと思います。 それでは皆さん、ごゆっくり(^^)/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 中学2年の秋。 今日もクラスでは、各クラスから人が寄ってきたり出て行ったりして、同じ部のメンバーで談笑してる事が多い。 ちょうど各部の新人戦もあと3週間となり、部活には気合が入ってる。 西日本のこの地域は毎年11月に多くの部活で秋季大会、いわゆる新人戦が行われる。 私も今年は部活で一番上の学年でついに選手に選ばれた。 しかも部長をやってる。本当に強いエースの子ではなく、2番手でまとめ上手って意味でお願いされた。半ば断りきれずに。 とは言っても私が所属してるバトミントン部はそんなに強くなくて、毎年県大会ですぐ1,2回戦で落ちる。 みんなの活動意欲、本気度合いもそこまで程でもない。 対して、この学校では県大会に恒例で勝ち上がっていく部活がそこそこある。 しかも地方大会まで出場するチャンスも。 そんなこんなでこの時期、運動部の子は結構皆んな忙しくしてる。 まぁ私は「それなりに」って感じ。 今日もゆっくりお昼休みをとる。 最近は皆んな同級生の部活メンバーで喋ってる事が多くて、同じクラスの時々来る友達とちょっとお喋りするくらい。 基本的には体力温存。 ぼーっとしてるのがいつものルーティンだった。 そんな私の友達の中にとても珍しい子がいる。 内山理沙ちゃん。 学年でもかなりの人気で、モデル容姿にフォルムがとてもいい。 顔も可愛くて、性格も棘がなくきらきらしてて素敵。普段は陽キャでまぶしい存在の子。 こないだまでファッションに全く興味のなく、いつもボテーっとしてる私は真逆の存在。 そんな子と私が友達になったのは、4ヶ月前に偶然美容室で居合わせて、さらにお互い初めてなのに名前で呼び合ってお喋りした時から。 たまに陽キャグループの輪から抜けてきて、私の方に喋りかけにきてくれる。 もちろん私からそっちに行くことは無いけれど。 そんな内山さんが今日も素敵な笑顔でこっちに来た。 ゆっくり休んでた私はちょっと頭を上げる。 理沙「彩ちゃん、おはよ」 私「あ、うん」 理沙「元気してる?」 私「うん、してるよ」 理沙「部活の方はどう?」 私はちょっと目覚めた。 私「あ、うん。私ね、チームと個人戦、両方出ることになったよ」 理沙「それはおめでと、良かったじゃん!」 私「ありがとう〜」 理沙「彩ちゃんも頑張って。部長なんでしょ?。バトミントン部全然注目されてないけど、注目される様にいい結果残さなきゃ」 私「うん、ありがとう。どうかな〜、私はやれる範囲で頑張ってみる」 理沙「彩ちゃんらしい〜」 私「理沙ちゃんの方はどう?」 理沙「私?、私も選手に選ばれたよ。団体、個人どっちも」 私「そっか!良かったね」 理沙「ただ個人戦のカードも決まったんだけど、ちょっと中々勝つの難しそうかなぁ」 私「そうなんだ…」 理沙「強豪校の一番強いエースに2回戦でシード枠当たっちゃうから熱い」 私「それは辛いね…」 理沙「でも団体戦はさ、特に女子卓球はうちの学校めっちゃ注目されるし、今のメンバーで結構勝てそうな気もしてるんだ!」 私「ええ!すごい期待!、いっつも注目されるもんね〜。準決まで行ったりとか」 理沙「よく覚えてるね。それ去年の中総体?」 私「うん、理沙ちゃん出てたの覚えてるよ」 理沙「うっそ、嬉しい〜。負けちゃったけど今年こそは頑張りたいんだ」 私「うんうん」 理沙「地方大会、夢なんだ。三国大会、全国大会までは遠いけどさ」 私「地方大会かぁ…。すごい遠いとこだなぁ…」 理沙「それでね、ちょっと話変わるんだけど日曜日のお昼ってお暇?」 私「え、うんっと、午前中は部活あるかな。お昼からなら大丈夫だと思うけど」 理沙「良かった〜。それじゃ午前中はお互い部活あるから午後からにしよっか」 私「ん?」 理沙「んっとね、そしたらイレブン銀行って分かる?」 私「あ、うん。近所にある所?」 理沙「そうそう。そこで13時に待ち合わせたいんだけどいい?」 私「うん、いいけど…、何しに行くの?」 理沙 「ちょっとさ、お互い今度の大会の為に景気つけ、しない…?」 「えっと、………。うん、カフェ行ったりとか、服屋さん行ったりとか」 私「あ、うん、いいね。それなら13時にイレブン銀行でいいの?」 理沙「そう、よろしくね」 私「うん、楽しみにしてる〜」 理沙ちゃんはこの会話をして再び他の場所に行った。 理沙ちゃんからの遊びの誘いはこれが初めてじゃなかった。 確か2ヶ月前は映画、そういえばこないだ服屋に行ったっけ。 2週間前の週末にも遊んだばかりだった。 普段理沙ちゃんは部活で忙しいだろうし、他の陽キャ組の子達との絡みもある。 そんな私に時間割いてくれるのは嬉しいこと。 でもそういえばこないだ服屋さん行ったよな〜とかちょっと疑問に思った。 まぁでも気分かもしれない。 確かに私は適当な新人大会かもしれないけど、景気つけをする事は良いことだし。 それに理沙ちゃんには頑張ってほしい。 だからこそちょっと楽しみにする私だった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 土曜日当日。 理沙ちゃんと私はどっちも12時に部活が終わるけど、バトミントンと卓球じゃ全然帰宅タイミングが違くて、今日も会わずに自転車で帰った。 部活だけの日はこうやって3kmの道のりを自転車で通ってる。 家に帰ってきて、軽く冷凍食品の昼ごはん。 そして出かける準備をする。 今日は理沙ちゃんが景気つけをしたいって言ってたし、多分街中でも行くんだろうなぁと思った私。 こないだ買った服を早速着ていくことにした。 実はこの服、家族にお披露目した以外は買ってから着るのが初めて。 何となく着づらかったんだけど。 カーキ色のシースルーシャツで襟元を立てて、 ちょっとくすんだ白デニムのスカート。 スカートにしてはロング丈になっていて、ふくらはぎの半分くらいまで隠れる。 ウエストを細く見せる為にちゃんと黒ベルトをした。 それぞれ理沙ちゃんが選んでくれた物で、ウエストのベルトはチャームポイントらしい。 シースルーシャツの腕元もちゃんと捲って、結構可愛くなりすぎめなコーデ。 今日は明るめのコーデだから、ちゃんと白のスニーカーを選んだ。 鏡を見てちょっとソワソワするけど我慢して家を出る。 程なくしてすぐイレブン銀行に着く。 理沙ちゃんは既にもう待ってた。 私「お待たせ〜」 理沙「ううん、全然。今来た所〜。それじゃ行こっか」 私「うん」 私達は駅の方に歩き始める。 理沙「私ね、今すっごく嬉しい!」 私「ん?」 理沙「私選んだ服着て来てくれて。しかもちゃんと腕元捲ってくれてるじゃん♪」 私「あっ、これで良かったかな…?」 理沙「ばっちり!、すごく明るく見えて可愛い。やっぱり彩ちゃんにはこういうコーデ、似合うよ〜」 私「ありがとう。理沙ちゃんも今日その服ってこないだの?」 理沙「あ、うん、そうそう。だからとても嬉しいの!」 理沙ちゃんもなんとこないだ買った服を着ていた。 私に合わせてくれたのか、こないだXUで買った一式のコーデ。 トップスは重ね着風のシャツ。 焦茶色のニットが肩からお腹にかけて重ね着してる様な感じ。 下のシャツは可愛い白で、腕の部分がボリューム袖になっていて腕元がちゃんと閉じてる。 またシャツの腰から下の部分がスカートの様にゆるく広がっててちょっと可愛く見せてる所から、ピンクブラウンの少し緩めなワイドパンツがボトムスに着てある。 理沙ちゃんも合わせてきてくれたのか靴は普通のベージュのスニーカーだった。 このピンクブラウンのワイドパンツ、ちょっとくしゅくしゅとしてる所が何より可愛い。 畳皺ではなさそう。ここがちょっとしたポイントなのかも知れない。 私「理沙ちゃんは流石だね〜。着こなしが違うよ」 理沙「ありがとう〜。でも全然そんな事ないよ、彩ちゃんも可愛いし、今日は2人並んでれば、かなりいい感じじゃない?」 私「確かに…そうかも」 理沙「今日はどこ行く?」 私「え、決めてないの?」 理沙「行きたい場所あるかな〜と思って」 私「ううん、特にないかな〜。ってより私そんなに詳しくないし、いつも通り理沙ちゃんにお任せするよ!」 理沙「分かった。じゃあまず街中出ちゃおっか」 私「うん」 私達は電車で都心の駅に出る。 そして最初になんと理沙ちゃんがゲームセンターに行きたいと言い出し、ここは私の方が役に立つと思って連れて行った。 1時間くらい遊んでから、14時半でデパートでちょっとウィンドウショッピング。 その後カフェに入っておやつタイムだから季節物のプラペチーノを飲んだ。 理沙ちゃんと私、学校で接点はあるけど普段は話し込んだりしない。 だから話題には尽きなかった。 でも理沙ちゃんが聞き上手だったり、リカバリーの上手さが光ってる。 もちろん理沙ちゃんの話を聞くのもすごい楽しかった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 そうして既に16時半を過ぎた。 理沙「そろそろ帰ろっか〜」 私「うん、そうしよっか」 私達は駅に向かう。 今日もすっごく楽しかった。 大会の景気つけにはちょっとなったかもしれない。 気分もすっきりした。 電車に乗って数駅。 突然理沙ちゃんがトイレに行きたいと言い出し、途中駅で降りた。 ここの路線は本数沢山あるから別に1本乗り逃した所で30分後に次の電車が来る。特に何も考えずに降りた。 私は駅のトイレの前で理沙ちゃんを待つ。 理沙「お待たせ〜ごめんね」 私「うん、全然いいよ」 理沙「うん、それでさ。ちょっとこの駅の外、出てみない?」 私「ええ?」 理沙「あのね、実は、駅降りたのは意図的なんだ」 理沙ちゃんは上手い。 顔と言葉が素直。本当に正直な人。 ちょっと申し訳なさそうな、でも聞いてほしいって目をしてる。 私「それでなんでこの駅で降りたの?」 理沙「先に説明しておくね。彩ちゃんのお母さんには今日ちょっと遅くなります、って事前に連絡入れてあるんだ」 私「え?。それって今日これから遅くなるっていうこと?」 理沙「うん、もし彩ちゃんが付き合ってくれるなら」 私「んっと事情聞きたいけど、その前にお母さんに電話してもいい?、私からも遅くなっていい?って確認取りたい」 理沙「うん、それは全然いいよ」 私はお母さんに電話をかける。 私はあえてお母さんに理沙ちゃんの名前を出さないで「遅くなってもいい?」と聞くだけだった。 私「あ、わたし。今日さ、ちょっと遅くなるけどいいかな?」 お母さん「元々そうでしょ?」 私「え?」 お母さん「お母さんね、内山さんって方から聞いてるわよ?、今日彩と遊んできてちょっと遅くなります、って」 私「あ、うん、そうなんだ」 お母さん「あんた良かったわね〜。最近こういう事無かったでしょ。それに生徒会であの内山さんの娘さんと友達なんて、びっくりしたわ」 私「え?」 お母さん「内山さんのお母様ね、保護者会の時にお会いして挨拶された事あるんだけどすっごくいい人だったわよ。あの人なら安心できるわ」 私「そうなんだ〜」 お母さん「内山さんね…」 私「あ、長話はごめんだから!、切るよ」 お母さん「はい、楽しんでらっしゃい」 私はちょっと驚いた部分もあったし、理沙ちゃんが素直な人ということも分かった。 そういえばお母さん、今日珍しくお小遣い以外にお金渡してくれたけどそういう事だったのかもしれない。 でも理沙ちゃんが今まで隠してた理由が分からない。 私はそれを知りたかった。 私「うん、おっけー。大丈夫みたい」 理沙「ありがとう」 私「そしたらまず駅出よっか」 私達は改札を出る。 私「それで、今日はどこ行くの?」 理沙ちゃんは私の方を見て、そそくさを手で髪を触り始めた。 毛先をくるくるっと手でいじってる。 ちょっと考え込んだ私。だけど気づくのにそんなに時間も要らなかった。 私「ん、あぁ。もしかして髪の毛切りたいとか?」 理沙「うん」 私「そういえばだいぶ伸びたもんね〜」 理沙「彩ちゃんもちょっと伸びたよね」 私「そうかも。でも私結構適当だから。理沙ちゃんこそ伸びたんじゃない?」 理沙 「そのね、実は今日の部活の景気つけって言うの…」 「これなんだ、本命」 私「ん。あ、なるほどね〜」 理沙 「今まで隠しててごめん。でもこういうのってどう誘っていいか分からなくて。 「普通にカフェとか、街中や映画館誘うのはいいけど、髪切りに一緒に行きたいなんてちょっと誘いにくくて…」 私「うんうん」 理沙 「それに彩ちゃんの髪事情もあるでしょ?」 「だけど、やっぱり彩ちゃんと一緒にいきたかったんだ。何かメリハリつくっていうか。あと普通に楽しいから」 「髪切られてる姿って友達に見られたりしたらちょっと嫌だけど、彩ちゃんだったら全然問題ないし」 私「それはちょっぴり嬉しいかも」 理沙「彩ちゃんも最近髪切ってなかったでしょ?」 私「うん、伸ばしてる訳でもなかったんだけど」 理沙「だから誘えるかなと思っちゃってて、中々切り出せなかったんだけど」 私「なんだ〜、全然言ってくれれば良かったのに」 理沙「でも学校じゃ言えないじゃん?」 私「あ、まーそうかもねー」 理沙「だからこういう機会、ちょっと前からタイミング伺ってたんだ」 理沙「だから今日いい?」 私「うん、全然いいよ、付き合う」 理沙ちゃんと私の言葉が同時に重なった。 私「はは、被った」 理沙「嬉しい〜、ありがとう!」 私「それじゃ行こっか。もう17時前だよ」 理沙「うん」 私は理沙ちゃんの後ろをついて行く。美容室は決めてるみたい。 私達は駅の南口から出て、大通りを進む。 理沙ちゃんの選んだ美容室だ。 さぞかし綺麗な場所なんだよね、と想像しながら歩いていた。 そういえばお母さんがお金を多めに持たせてくれたのもこの為だったのかもしれない。 5分くらいした所で国道との交差点を右手に進んで、あるビルの1階に入ってる歩道に面した美容室の前で立ち止まった。 理沙「あれ〜ここのはずなんだけどな」 私「え?」 理沙「うん、やっぱりここで間違いない。名前変わったのかな」 目の前に開いたまんまの大きな片開きのドアがある。 片開きのドアの左の隅っこに何やら掲示物があった。 理沙ちゃんはそれをじっくり読んでいた。 理沙「あっ、そうなんだ〜」 私「どうしたの?」 理沙「ここの前店舗グループが買収されて、新しい店名になったみたいなんだ」 私「そうなんだ〜」 私もその掲示物をちょっと読んだ。 私「あれ?、この名前って」 理沙「そうだよ。彩ちゃんの一番最初に喋った美容室」 私「あっ、そうなんだ!」 理沙「今日は自転車乗ってきてないし、徒歩で来れるここにしたんだけど」 私「そっか、そういう事ね〜」 理沙「でもどうする?、新しい店になったなら別の美容室でもいいよ」 私「いいんじゃない?、ここ入ろうよ」 理沙「いい?」 私「うん」 開いたまんまの大きな片開きのドアを今度は入った。 すぐそこには左手にボードがあって、 『只今混雑しております。お名前と人数、希望のメニューに丸をしてお待ち下さい。  荷物の方を右手のロッカーに入れて、鍵をおかけ下さい。また鍵は無くされないようお願い致します。  入口外の道路側にあります街路樹の椅子でお待ち下さい。順番が回り次第、お名前をお呼び致します』 と書かれている。 私は入口の左手にあるボードに挟まってる紙に、 【双葉(様) 2(人)】、カットとシャンプーに丸をつけた。 すぐ右手にはロッカーがあった。 私は肩から下げていた小さいベージュのバックからスマホと財布を取ってロッカーに入れた。 理沙ちゃんも大きめの茶色の手提げかばんからスマホ、財布、身の回りの物を取ってロッカーの中に入れた。 それぞれ鍵を閉める。 私達は入口の外。 歩道に並んだ街路樹のベンチに座った。 理沙「結構混んでたね〜」 私「うん。でも私達が待ち合いは一番上だったよ」 理沙「そうなんだ。でも意外とこんな時間でも混んでるんだね」 私「日曜日だからじゃないかな?」 理沙「そうだね…」 私「まぁゆっくり待とうよ、時間は幾らでもあるんだし」 理沙「うん、そうだね」 こういう時にやっぱり話が尽きない私達だった。 いくらでも話す話題はある。 ほんの少しして店内から店員さんが来た。 店員「ご来店ありがとうございます。お2人様でお待ちの双葉様で宜しかったでしょうか?」 私「はい」 店員「今からお2人別々でしたらご案内できますが、どうされますか?」 私「えっと…」 理沙「並んでお願いしたいです」 店員「かしこまりました。それではもう少々お待ち下さい」 店員はまた店内に戻っていった。 私「大丈夫?」 理沙「ん?」 私「私は全然別々でも大丈夫だけど?」 理沙「別々は私が嫌」 理沙が初めて “嫌” などという言葉を口にした。 普段は学校でも絶対聞けないトゲ言葉。ちょっと私は驚いた。 私「そっかそっか」 理沙「ごめん。彩ちゃんは早く終わった方が良かった?」 私「うんん。私はどっちでもいいよ。だから一緒に並んでにしよ?」 理沙「ありがと、彩ちゃん」 また再び他愛もない話を続ける形になった。 私達よりも後から来た人が、1人で店内の回転状況的に先に案内される事もあったけど、そんなのは特にって感じだった。 ここに座ってからは数人店内からぼちぼち出てきている。 ドアが少し斜め前で、ドアが開いたままになってるから店内がよく見える。 鏡越しに一番ドア手前で座ってるお客さんがこちらからよく見えていた。 10分程した所で再び店内から若い女性の店員さんが出てきて呼ばれる。 店員「お二人でお待ちの双葉様、ご案内の準備ができましたので店内奥の8番、9番のお席へどうぞ」 私が入口の方に立っていたので、私から店内に入っていく。 店内は木のような色のタイルに、暖色系の照明で暖かい感じの雰囲気。 店内に入るとすぐ左手に1,2番のセット面。 その奥、左手の壁際には3,4番のセット面が見えている。 そして店内をちょっと進むと正面の壁際に、右からセット面が5,6,7,8,9番と並んでいる。 ちょうど入り口の正面の椅子が6番と7番の間。 そしてさっき3,4番があった椅子の壁際の正面に9番の椅子がある。 また9番の左手の奥のスペースは仕切りで、奥にシャンプー台が3つ並ぶ。 1つはフルフラット式のさらに洗面器が大きくて、よくヘッドスパで使われる専用の物。 そのシャンプー台の向かい側に10番のセット面がある。 カットチェアは店内に合わせてあって木のようなメープル色。 よく美容室にあるステップ式の普通のチェア。 各チェアの正面には、木目な縁取りに、椅子のステップの少し上くらいから天井くらいの高さがある縦長で長方形の鏡。 7番に座ってカットされている女性が少し椅子を上げられてるけど、全身がすっきり写っている。 私らは正面に出て、左手。私が9番、理沙ちゃんが8番の席に腰かけた。 多分また店員が来るまでここでしばらく待ってるのだろう。 流石に店内ともあって、隣の理沙ちゃんもちょっと黙り込んでた。スマホをチェックしてる。 私はちょっとだけ周りの観察。 ここは確かに前行った美容室と同じ系列っぽかった。 理沙ちゃんの隣でカットされている女性は、以前理沙ちゃんがカットされる時に巻かれていた赤いボーダーのケープ。 その隣はボーダー柄が続いて青色。大体20代くらい人がちょっと長めのボブくらいでカットされてるのが見えた。 奥の5番の席はケープだけだけど、濃い紺色の花の生地デザインに白いかたどった花が少し混じってる感じ。 平面的なデザインのケープでこれは初めて見た。 対して鏡越しに見えるのは3,4番の席。 3番のカット椅子ではカラーをしている女性。 4番のカット椅子には、ピンクと紫のハイビスカスっぽい花が下半身の方にデザインされたケープを巻かれてる20代くらいの女性。 綺麗なミニボブでブローの方をされていた。仕上げっぽい。 また隣のシャンプー台には誰もいる気配がなかった。 以前見たケープもそこそこ使われていて、なんか美容室の名前がそのまま変わった感じに覚えた。 私もこれ以上観察することがなくて暇になってスマホに目線を落とす。 5分くらいした頃。 スマホに夢中になってた私は、店員さんの声で頭を振り上げた。 店員「こんばんは。本日はご来店ありがとうございます」 そこに立っていたのは20後半から30位の若い男性。 すらっとしていて長身、そしてイケメン。 私は思いっきり年上の男に興味はなかったけど、間違いなくモテるであろうタイプの人。 店員「本日カットとシャンプーを担当させて頂く生野と申します。宜しくお願い致します」 私「よろしくお願いします」 店員「今日はこんな感じにしたいな…とかイメージはありますか?」 私はハッとする。 そういえば付いてきたはいいものの、何考えてなかった。 第一感で思いついたのは、今のボブを3ヶ月分くらいでまた揃えてもらうこと。 いや、でもそれじゃ。そういえば今日は隣に理沙ちゃんがいる。 今日は景気付けに来たわけだし…。 多分理沙ちゃんはまた刈り上げボブにするのかな? そしたら私がただ揃えるだけってなんか…って引っかかった。 そんな思想が巡る。 ただ切り揃える以外にどんな選択肢があるというのか。 私の脳内フル回転。 そんな様子を見ていた男性店員が声をかけてくる。 生野「えっと…お困りでしょうか?」 私「あ、いえ」 隣でスマホをいじっていた理沙ちゃんまでもこっちを向いた。 後から聞いた話だけど、この時理沙ちゃんは私はいつものようにボブを綺麗に揃えるだけと思っていたらしい。 だから気軽に声かけられたんだよ、って。 生野「それでは一旦カウンセリングから始めてみませんか?」 “カウンセリング?” 私は初めて聞いた言葉。 分からなかったけど、とりあえず「はい」と時間を稼ぐために本能的に答えてしまう。 生野「それでは少し髪、頭の形を知るために触らせて頂きますが、よろしいですか?」 私「はい」 男性店員は割と真剣な眼差しをして、私の髪を触り始めた。 また頭を覆い包むように、頭の骨格も確かめてるようだった。 もちろん私とってこんなの初めての体験。

生野「普段はどのようなアレンジ、ヘアスタイルをされていますか?」 私「特に…。いつもこのままです」 生野「アイロン使ったり、ワックスとか使われたりはされますか?」 私「いえ、普段は使いません。でもコテはほんの少し友達と、ワックスも使った事あります。毛先はねるとか」 生野「分かりました。普段クセとかそういったことで気になる点、あったりされますか?」 私「えっと、この長さはないです。ただ長く伸ばすと少し跳ねる傾向はあります。長く伸ばす予定は今のところないんですけど…」 生野「ちなみにどれくらい長く伸ばされると跳ねてきますか?」 私「鎖骨くらいだったかな…。結構昔のことなのではっきりは覚えてないんですけど…」 生野「なるほど、分かりました。ただ髪を伸ばしていく考えも今はないんですね」 この店員さん、すごく的確に情報を割り出して聞き上手。 そう思った。 生野 「例えばの話をしますが、双葉さんはヘアスタイルで、 可愛く見られたい、柔らかフワッとした感じ、どちらのタイプが好きですか? それか拘らない・クール・もしくはカッコよく決めたい派。 とか色々ありますが」 私「え?」  「えっと…………」 理沙「あ、強いて言うならクールだと思いますよ」 ここで突然理沙がフォローを入れた。 すかさずスタイリストさんが口を挟む。 生野「ありがとうございます。双葉さんのお友達でしょうか?」 理沙「はい」 生野「教えて頂きありがとうございます」 理沙「あと基本的に彩ちゃんは気にしないんじゃないかな」 私「うん、特に拘ってないと思います」 生野「そうですか、なるほど…なるほど…」 生野「普段のお手入れの方はどのような形でしょうか?」 私「お手入れ…って?」 生野「すみません。例えば市販のトリートメントやヘアオイルとか…」 私 「…。私そういうのは特に使ってないと思います。母親のトリートメントをシャワーの最後につけるくらいで」 「髪傷んでたりして…とかですか?」 生野「分かりました。それで全然大丈夫ですよ。とても綺麗な髪質だと思います」 理沙 「この髪質もったいないよね。顔の形も」 「美容師さん、彩ちゃんって多分どんな髪でも似合いますよね」 生野「…。そうですね。結構色んな髪型は似合うと思います。雰囲気もがらっと変えれるし、骨格とか顔の形から言うのであっても」 私は “へぇ〜” と思いながら聞いてる。 生野「えっと、お二人は学生さん…ですよね?」 理沙「はい」 生野「ちなみにどちらの市の学校ですか?」 理沙「ここの隣のいずみ野市の中学校です」 生野「分かりました。お近くなんですね」 生野「ちょっと失礼します」 美容師さんはズボンのポケットからスマートフォンを取り出した。 何かを調べて確認している。 そして確認し終えたのか、再び戻した。 理沙ちゃんはカウンセリングをしてもらってる私の方に興味津々で、こっちに完全に顔を向けていた。 生野「これが最後の質問なんですが、双葉さんは普段、部活等はされていますか?」 私「ん…?。してますけど…」 理沙「この子は運動部です。バトミントンやってますよ」 生野「ありがとうございます。それが聞きたかったです、ナイス解答」 美容師さんは後ろのワゴンの前に置いてあった丸椅子を持ってきて座った。 生野「双葉さん、この時間の間に今日どんな感じにしたいかとかのイメージの方は浮かび上がったりされましたか?」 そーいえば何も考えてなかった。 美容師さんの質問に答える、聞き上手ですっかりその世界に入っていて忘れてた。 私「あ、いえ…」 美容師さんは椅子に座りながら私の後ろを回って、また私の髪を頭の形を確かめるように触り始めた。 生野「そうですね〜」 生野「そしたら思い切ってこれくらい、ばっさり切ってみませんか??」 私「えっ?」 生野さんは私のあごくらいの高さで髪を持ち上げてる。 今まではしたことない長さ。 突然のばっさりってワードに思わず反応してしまった。 生野「すみません。お友達の方のヘアスタイルもぱっと見させて頂いたんですが、バックってちょっと刈り上げしてますよね?」 理沙「え、よく分かりましたね」 生野「多分、双葉さんの方は近いうちに刈り上げとかされた事ないかと思います、どうでしょうか?。この髪の伸び方を見ていると」 私「はい、近いうちっていうか…刈り上げは一回もした事がないです」 生野「すみません。お友達さんの方、お名前伺ってもよろしいですか?」 理沙「内山です」 生野 「内山さんですね。ありがとうございます」 「それで。ばっさり切るのに加えて、双葉さんも内山さんみたいにちょっと刈り上げしてみませんか?」 私「ええっ?」 生野 「内山さんは刈り上げとか短い髪がすごく似合う人だと思います。  それはご自身で把握されてますよね、きっと」 理沙 「あ、まぁ、若干は。長く伸ばしてるヘアスタイルでレイヤー入れてもらってアイロンでアレンジするか、  短いヘアスタイルでインパクトをつけてしゅっとさせるの2択ってのはなんとなく」 生野 「素晴らしいですね。  それで双葉さんもなんですが、似合うと思うんです、短いヘアスタイル」 「実は最初にこちらに来たときに担当の双葉さんを見て、頭の形からショート似合いそうって一瞬で思いました」 「首がちょっと長くてシュッとしてそう。首から肩にかけてのラインが綺麗。それにショートを思い浮かべたときに顔がよく似合ってるんです」 「それが第一印象でした」 私「…」 生野 「それで色々聞いてみたのですが、もちろんウェット状態にしてみないと髪のクセとか実際正確に把握できないので、現状は何とも言えません」 「ただ、普段アイロンとかは使われたりされない。起きたままの状態でヘアセットせずに学校行きたいとかはありますよね…?」 私「……、はい…」 生野 「クセの方は普段このボブの長さ。  多分切られた時はもうちょっと短くて、首の真ん中くらいの長さ。  それでクセは特に気になる心配はない」 「またお手入れの方もトリートメントだけで基本最低限。  もちろんそれで生は学生さんなら充分なんですけど、髪が短い方が手入れもしやすくて状態も扱いやすい」 「最後にヘアスタイルの雰囲気について、特にこだわりがないという所。  あとお友達の客観視点でちょっとクールに見えるなら、結構短くすっきり切るのイメージに合うと思うんです」 私「…」 生野 「あとショートヘアならきっと気持ちいいですよ」 「部活動、運動部ということで汗をかいて、ボブだと頭の中が毛量多くて蒸れたり。  バトミントンなら飛ぶ時とかに今の髪の毛って邪魔になりませんか?  今この長さだとギリギリ結べるか…くらいかと思いますが」 私「はい…」 生野 「ショートならその分、すっきりプレイングする事もできますよ」 「あと涼しいです。汗かいても気にならない。  体育館での競技なら冬場はかっちかちに寒くなる事もなく、汗を全然かくシーンもあると思うので、年を通してお勧めです」 理沙「それってボーイッシュなショートになったりとかって事ではないんですよね」 生野 「もちろん。双葉さんは緩やかな女の子っぽい所がとても可愛いポイントなので、女の子らしさはちゃんと残します。  かつそこを残したまま、すっきりクールにも決めて引き立てていく感じでイメージ立ててます」 私「ちなみに刈り上げって大丈夫なんですか…?」 生野「えっと、どういう?」 私「その…校則とかで」 生野「その点なら大丈夫です。近隣の中高の校則なら共有されてて私も知ってるんですが、さっき表を見たら大丈夫でした」 理沙「そうそう、うちはツーブロックとかも禁止排除されたからね。一昨年からだったか」 私「そうなんだ〜………」 生野 「そしたら私も一旦ウェット状態見たいので先にお流ししたいのですが、よろしいですか?」 「決めるのはそれからでも全然大丈夫ですよ」 私「はい…」 ボブよりちょっと短く切ること、ましては刈り上げなんて少しでも乗り気ではなかった。 でもスタイリストさんの説明はしっかりしたもので理解はしてた。 理沙ちゃんに、 “してみたら?” とかって後押ししてくれる言葉もちょっと期待してた所あるけど、何も声をかけてくれない。 だからはっきり断りきれない私も悪い。 乗り気じゃないし、実感も自信も全然ないし、 理沙ちゃんの声があったらなぁ… そんな事を思いながら、隣のシャンプー台に移動した。

レビュー

まだレビューがありません

その他(動画・音楽・文章)