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セイラック~山と川と釣りの物語 vol.5 ギザギザ模様のクサモン・レトケ

セイラックで釣り具に出会う

これは、東北の城下町にあるセイラックというプロショップと、そこで僕が出会ったルアーやそれに関する話である。 この店は釣り具とアウトドアの店だが、外観はただの洋館である。中に入るまで、そこが店舗だということには全く気がつかないだろう。 そもそも店の存在を知っている人も常連の人たちだけだと思われ、それで商売が成り立っているとはとても思えないのだけれど、まあそれは僕には関係ない。 中に入ると、現行製品と古い釣り具や中古品、何に使うのか分からないような道具が雑然と並んでいる。品揃えはかなり片寄っていて、もはや感動的ですらあるほどに店の主人の趣味、モノに対する主張が前面に押し出されている。 まず、ルアーに関してはスプーンが多い。そして、大手メーカーの商品や新製品が少ない。 クマを追い払うためのベアスプレーはあるけれど釣り場マップはない。 ナタはあるけれど、サバイバルナイフはない。 キャンプ用のイス、ガダバウトチェアしか置いていない。 ダイワのチヌークは少ししか在庫がないけれど、同社のスピンスターは廃番になった今でも、金・銀・黒、全色揃っている…とまあこんな感じだ。 店の主人は言幸さんといい、名字は彼との約束で書かないことになっている。「ことゆき」なのかもしれないけれど、僕は「げんこうさん」と呼んでいる。言う=SAY(セイ)、幸=LUCK(ラック)で、セイラックという名が付いたのだという。 神奈川県の小田原市には、「聖楽堂」というちょっと変わった本屋さんがあるらしいが、そことは店の名前が似ているだけで全く関係がない。 その店で僕は過去に、北海道でイトウ釣りをするときのためにフレッドアーボガストのマスキージタバグ、ティスクのウトー、ルブレックスのオークラ、ヘドン・タイガー、アブのドロッペンなどを買い、オークラで生涯初めてのサクラマスを釣り、タイガーでは巨大なアメマスを掛け損ね、川でなくしたドロッペンと店で出会うといったような不思議な体験をした。 その話が、この連載の4回目までに書いてある。

教授と医師

ある日セイラックに入っていくと、珍しく言幸さんが話しかけてきた。彼はだいたいいつも黙って仕事をしていて、あまり多弁な方ではない。何かものを訪ねればもちろん応えてくれるのだが、彼の方から話しかけてくるのはあまり多くない。 店に入る時に挨拶はするけれど、その時も低い声で返してくるだけだ。だから、欲しいものがなかったときなど、最初と最後の挨拶以外に言葉を交わさないことすらある。 そんな言幸さんが話しかけてきた。これはちょっとした事件だ。 店の奥にあるカウンターに近づくと、パッケージに入ったルアーがひとつだけ置いてあった。クサモンのルアーで、名前はプロフェッサーとある。これがどうかしたのかと聞くと、言幸さんは何も応えずに、にやにやしている。 これは何かあるぞ。放たれた矢がどこを向いているのかは分からないが、何事かを試されているに違いない。僕はその挑戦を受けることにした。

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