握られた手、 ユノ先輩の力が強くて僕の意識はキュヒョンからユノ先輩に戻った。 「ユノ先輩、痛い。」 「うん。わざと。」 「え?」 電車の椅子に並んで座っていた僕達は顔を見合わせた。 「だってチャンミン。キュヒョンの事しか考えてないんだもん。」 「そんな事はありませんけど?」 「久し振りに会ったんだから仕方ないけどさ。」 ユノ先輩は妬いてるのかな? もしかして。 ちいさな顔のほっぺたを膨らませて可愛い横顔に僕は指を立てて突いた。 「なんだよ。」 「別に。」 ユノ先輩……。 僕の事どう思った? 僕はオタクです。 良くわかったでしょ? キュヒョンみたいな友達をいっぱい見たでしょ? へんてこな本を買っているのを見たでしょ? 「チャンミンの友達って皆いい奴な。」 「え?」 「だって初対面の俺にも優しくしてくれてさ。見ろよ。あのスペースにいた奴等なんて自分達の出した本なんだって!それを全種類俺にくれたんだぞ?売り物なのに。」 ユノ先輩のリュックの中には同人誌が何冊も入ってた。 ユノ先輩って。 天然なのか。 本当にいい人なのか。 「……キュヒョンも同じ様な事を言ってましたよ?」 「え?」 「ユノ先輩はいい人だって。」 「本当?」 「えぇ。僕もそう思います。」 「あはーはー。なんだよそれ。」 僕は痛いほど握られた手を今度は優しく握り返した。 「?」 電車の中だったけど時間も遅かったせいか人は少なかった。 「早く帰りたいです。」 「うん。疲れたもんな。」 「暑かったから汗でぐちゃぐちゃです。」 「俺もー。」 「早く家に帰ってシャワーを浴びたいな。」 「そうだな。」 「そしてユノ先輩とエッチしたい。」 「は?////」 「今日は僕の家に泊まって下さい。」 「どうしたんだよ。////」 きゅっと握った手をきゅっと握り返された。 それってOKのサイン? 「チャンミン。ずっとおかしいぞ?」 「そうですね。」 僕はずっとおかしかったんだ。 あなたといた僕はずっと僕じゃなかったんだから。 それを知っても。 あなたは僕を好きでいてくれるだろうか?

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オタクの恋。5(最終話)
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