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182 二浪最後の私大模試

ど~よ~よ~ん なんだこの ただならぬ重苦しい空気は・・・。 玄関を開けたとたん感じるマイナスオーラ・・・。 玄関脇のパパるの部屋では部屋の主が いつものようにPCをやっているようだった。 普段と変わりないようにも感じるが・・・ いや やはりどこ無く違う。 全体的に。 私は買い物してきた食材の荷物をどさっと上がり口におろす。 目線の先にイチローの靴があった。 「あ、帰ってる・・・。」 顔を上にあげ、 廊下の先にあるリビングを見るとそこは真っ暗。 リビングの先にあるイチローの部屋は静まり返っていた。 私は彼の部屋のドアを細くあけて  「ただいま」  と声をかけた。 く、暗い・・・。 そこら一体からなんとも言えないオーラがでている。 PCをやっていたイチローはちょっとだけ首を傾けて 口を開けずに  「おかえり」  と言った。 口を開けずに話せるなんて ちょっと練習すれば腹話術だってできそうだ。 大した特技だ。 そういう道だってあるかもしれない。 まあ腹話術師はともかくとして 今日は二浪最後の私大模試・・・。 やっちまったか。 恐くて聞けない。 私は彼の部屋からとっとと出たが、 両肩を落として、はぁー っと 声に出さないようにため息をついた。 最後の模試と言うのは得てして難しい。 そういうものなのだ。 でもだ。 イチローは二浪だ・・・。 最後の模試は難しい・・・。 もうこのセリフも三度目だ。 そこを掘り下げてみても仕方ない。  済んでしまったことだ。 どこか行けるところを探して確実に押さえておいて  駒を進めることを考えておかなきゃ。 どこがいいかなぁ・・・。 そんなことを考えながら食事の準備を進めていたら  イチローが部屋から出てきた。 「腹減った」 その日本語しか知らないのか?っていうくらい よく聞く日本語だ。  次点が 「飯何?」 だ。 私は不自然なくらい元気に今日のメニューと食事の予定時間を発表した。 「海鮮寄せ鍋~!あと15分くらい~。」 母の元気声に似つかわしくない、暗ーい声で 「・・・また鍋・・・。」 と返して彼はトイレの方へ消えて行いった。 あのね、鍋はまだ今年二回目ですよ。  毎日食わしてるみたいに言うな。 私は この間 発売になったアーティストのCDを DVDでかけながら食事の支度をしていた。 CDをDVDで再生するとTV画面はスクリーンセーバーが写る。 戻ってきた彼はその見慣れたDVDのスクリーンセーバーを 見るともなしに眺めていた。 でもその背中は、やはり元気がない。 それを見たとたん私は 聞く気なんか無かったのに、  気が付けば 「どうかした?」  と声をかけていた。 イチローは  「いや・・・。べつに・・・。」 と振り向きもしないで答えた。 これ以上の質問は 何か食べさせてからだな。 彼は また鍋 と言った割には 鍋をよく食べた。 食事がすんでしばらくすると、 私が頼んでおいたYゼミの受験カレンダー等をもって再びリビングへ現れた。 「あ、ありがとう。で どうだったの?」 「どうもこうも・・・ねえ。できるわけないでしょう。」 「物理は?」 「・・・ビミョ~。」 「数学は? 「・・・ビミョ~にできてない。」 「数学なんかできないよね。 模試なんかいくらできたって関係ないよ。 受験大学の問題出来なきゃさ。で、微積はできたの?」 「ん~ま~ ビミョ~?」 ビミョーの最後のイントネーションが 上がるか下がるかで少し差があるらしい。 本当に微妙な説明だ。 「微積のあたりは記述だから、正確には解らないか。  まあいいや。とにかく絞って対策していこう。  絞れ絞れ!大学絞れ。」 イチローは軽くうなずいた。 「願書はもらってきた。W以外はそろった。」 と言った。 そりゃよかった。 願書が有料のところは、予備校や学校でもらうに限る。 後は調査書だな。 くだらないやり取りをしたので 彼の重かった口が少し動いた。 「数学なんかさ、模試で得点できる気がしない。 算数時代の模試から一回もできたことがないからね。」 これは嘘のような本当の話なのだ。 これだけ勉強して、しかも イケメン先生のような優秀な人が指導してくれて、 勉強自体は理解しているはずなのに、 こうも成績が上がらないでいるのは 「注意欠陥多動性障害の 軽いもの ではないですか?」 と ブログにメッセージが届いていた。 ああもう。そうかもしれない。 障がいだったら仕方ない・・・。 そんなある日パパるが突然頭を丸めた。 そう。坊主にしてきたのだ。 人生二度目の坊主だ。 一度目は高校時代陸上部のころ、優勝できなくて全員坊主! みたいな話だったと思う。 「会社で何かやらかしたの?」 と驚いて聞くと 「俺の部下の失敗を、必要以上にネチネチやる奴がいて そいつを黙らすためにやったのさ。」 と言う。 へー。 そんな男らしい理由なら大腕を振って坊主で出勤すればいいものを なんとパパるはかつらを買ってきた。 超 取ってつけた感がある。 風で飛びそうだ。 ウケ狙いか? 「かぶらない方がかっこいいわよ。 立派な理由なんだし、堂々と してればいいのに。」 「いいんだよ。かつらだって周りにわかったほうが。 誰にもわからなかったら、坊主にした意味がない。」 と、よく解らない説明してくれた。 坊主にした理由を知らないイチローが 「どうして坊主になったの?」 とパパるに聞いた。  よくぞ聞いてくれましたと 武勇伝を語るかと思いきや 「きみにはまだ話す必要はないな。」 と何故だか秘密にする。 パパるが自室に入ってから イチローは、今度は私に聞いてきた。 「理由、何? なんで教えてくれないの?」 「なんで教えてくれないのかな。解らない。男らしい理由なんだけどね。」 私は正直に説明した。 「お母さんは知っているの?・・・だったら教えてよ。」 人は隠されるほど知りたくなるものだ。 私は隠す必要もないと思ってイチローに話した。 「・・・へぇ」 と彼は言った。 「お母さんはそう聞いたけど。なんか変だよね・・・。 なんでイチローに言わないのかな。 もしかして、嘘だったりして。 本当はやっぱり自分の不始末で坊主なのかも・・・。 かなり減給されてたりして。 もしイチローが大学全落ちしたら  お父さん 助かった~大学どころじゃなかったんだよ。  って言うかも。 一緒に働こうな~ってありがたがられるかもね。 」 それを聞いてイチローが やっと笑った。

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