有料記事

二浪日記133落ち込んだ英語134入試の分析135最初の問題で136完全回答

1

70人以上が購入

133 面談:落ち込んだ英語

私のケータイのメールを知らせる着信ライトが光った。 慌ててメールを開くと 「生徒は全員帰宅しました。いつでもお越しください。」 の文字・・・。 今日は面談の日。 二浪の今年は最悪の想定もしておかなくてはならないので、突っ込んだ質問もしていきたい。 でも、私の不用意な発言で、イチローがもう頑張っても無理なんだ、等と誤解しないように二者面談を選択したのだった。 私は、念には念を入れ、塾から帰るイチローとばったり道で会ったりしないように、イケメン先生に来塾のタイミングをメールしてもらうようお願いしたのだった。 「では じきに伺います。」 私は短く返事を返す。 その日は10月にしては蒸し暑い日だった。私は着てきたスーツの上着をもてあまし、それを左手にかけたまま塾へと向かっていた。 オートロックのモニターホンで教室になっている部屋のナンバーを押しながら ガラス扉の向こうに目をやると、 無機質な感じでまとめられたインテリアのなかに、 黄色いオンジュームが花瓶一杯に見事に生けられてあった。 ここへは何度か来ているはずだけど、 いつもお花なんか飾ってあったっけ・・・? 私がオンジュームを見ていたら、ほどなく自動でドアが開き、 遅れて「どうぞ」という確かに聞き覚えのある声が響いた。 私は鮮やかなオンジュームの横を通り、エレベータで上階へと上がった。 このマンションは各々の部屋の前に、専用スペースが設けられている。 そこの小さな門扉には「最近付けられた」とイチローが言っていた、、 洒落た金属製の、塾のネームプレートがキラっと光っていた。 私は手に持っていたジャケットを羽織ると、中へと入った。 形式通りの時候の挨拶を済ませ、勧められた椅子に腰かける。 すると机の中央に今日も築かれている参考書の小山が目に入る。 さっきまで使われていたのだろうか。 その山は、まだなんとなく息づいている感じだった。 そしてその小山は夏の面談時と違って、 ほとんどが赤くそまり秋の風情をかもしだしていた。 ・・・そう。   参考書のほとんどが赤本に変わっていたのだった。 6月には、良問プラチカや重要問題集や基礎精講の山だったのが。 受験はかなり近づいてきている・・・、と言うのをそんなところでも感じるのだった。 「最近どうですか?イチロー君の家での様子は?」 イケメン先生は静かな教室で、静かに話し出す。 「・・・家での、勉強の様子ですか?」 私は聞き返した。 勉強の様子を聞きたいのか、 ここでは見せないメンタル面を聞きたいのかが図りかねたからだ。 先生は 「そう。勉強・・・。」 と言った。 そして 「してるでしょ?最近ちょっとやり出したのではないですか?」 と続けた。 はっぱでもかけてくれたのかな?私は 「そうですね~。やってはいますが・・・。」 と、無難な返事をして時間を稼ぎながら、 頭の中で、最近のイチローの様子を遡ってみる。 「・・・あ、そうそう。あの、英語のお休みがあったじゃないですか。 9月の上旬に。そこでなんだか一度ブレーキがかかってしまったようで。  随分ベースが落ちてしましいましたね。 でもここ数日、確かに大分戻してきたかな・・・。 ん~・・・。 ・・・とは言っても、やっぱりあの休み前ほどではないですね~。」 と答えた。 先生は、いつもポーカーフェイスのくせに、 今は やっぱりね、という感じを顔に出して 「そうなんですよ。キャサリン先生から聞きましたが、 イチロー君とマサヒロ君はあの休みで、 かなり英語の力を落としてしまったようなんです。」 と言った。そして、 「もう、ガクッと。」 最後に あーあ。と言う言葉が付く感じでそう付け足した。 「先日かなり言われてましたよ。キャサリン先生に。ここで。」 先生はそのときキャサリン先生とイチローが座っていたであろう席に 目を向けながら言った。 私はなんだかその時の状況が浮かんでくるようだった。 先生はその席の方を見たまま、 「ああまで、キャサリン先生が言うなんて。・・・先生も必死なんですよ・・・。」 と言った。 キャサリン先生を思いやるような、そんな感じだった。 そうか。キャサリン先生も、なんとか間に合わせてやろうと必死なんだ。 とにかく時間が限られているからな・・・。 ちょっと目を離した隙に 勝手に生徒に後退されたら、 間に合うものも、間に合わないよな・・・。 私はキャサリンに同情した。 しかし、あの二人。あの二人だけ。 他の生徒は問題ないようなのに。 そんな思いがあふれてつい 「マサヒロもなんですか!」 と口から出てしまった。そして 「なんなんでしょうね。あの二人。 あの二人だけ・・・。 他の問題問題ないみたいなのに。 私もあの休みにはちょっと嫌な予感がしたので、 英語がお休みだったら(復習の)チャンスだね  と一応言ったのですけどね・・・。」 と続けた。 復習のチャンスとイチローに言ったのは、本当だった。 いつも時間に追われて、音読やら、和訳やら、単語やらをやっているが 大抵やりきれない。  そして時間ぎりぎりになってウチを飛び出す。 そのうしろ姿は、時間さえあればもっとやってからいくのに・・・ といつも言っていた。 だから、時間がある休みには、落ち着いて取り組めるはずだった。 でも実際は・・・。 英語の授業があって、忙しいときよりも、更にやらないだけだった。 やっぱり人と言うのは、忙しすぎるくらいの方が、いろいろとこなすものなのだ。 それにしても・・・。 落ちるもんなんだね。英語の力って。 そこで伸びが停滞した、っていうならわかるけど 積み上げてきたものでも、放っておくと維持されないんだね。 そっか。マラソンみたいなものか。 ある程度の距離を、ある程度のタイムで走れていても、 練習を辞めた途端、できなくなるよね。 私が肩を落としていると、 「けどまあそれは、ちゃんと見てさえすればいいってことでもありますよ。 見ているときはできてたし、伸びてたのですからね。 (僕らがしっかりすることで防げることですよ。)」 先生は慰めるようにそう言った。 私はその言葉に救われて、顔を上げてこう言った。 「先生はご存じでしょうけれど、英語はもともと苦手で覚えられないようなんです。 それから、進捗状況の何倍も疲弊してしまうようで・・・。 金曜、土曜と続けて英語がありますよね。 金曜の夜が忙しいのは解ります。明日の英語に備えて。 でも土曜はお昼過ぎから二時間英語の授業があるだけだし、 その授業の後は比較的余裕があるように思いませんか? スケジュールとしては一週間の中で一番ラクな日に見えたんですね、 だから、その英語の後に、化学を入れたらどうかと言ったんです。 そしたら絶対無理だって。」 イケメン先生は 思い当るところがあるのか ふーん と言う感じで聞いている。 「それで 結局 数学の後に入れたんですよ。化学。  その方がマシなんだそうです。   数学5時間の後のほうが、頭はよっぽど疲弊してそうですよねぇ。」 先生は なるほどね と言う感じで こう言った。 「全然違うんですよ。使う頭が。英語と理系科目は。 数学の後に、化学なら、まだ同じような調子でいけるんでしょうけど 英語の後には・・・、波に乗れないんでしょうね。」 私は全く不思議がらない先生が不思議だった。 去年の今頃は  「僕と詰めて、数学5~6時間もやったら、もうヘロヘロですから ウチで勉強しなくてもいいです。」 と言っていたからだ。 それに イケメン先生のように数学の問題を解くことが好きな人なら解るけど、 イチローはそういうタイプではない。 奴は数学が好きじゃないし、計算はまずミスる・・・。 そんな イケてない数学のあとに、 これまたできもしない化学を3~4時間勉強するなんて 無謀なスケジュールにしか見えないけどな・・・。 「そんなもんなんですか。頭の使う部分が違う、ねぇ。」 私は言った。 「そうです。ああいう英語のような単調と言うか、 理解すると言うよりも、淡々と覚えていく作業がつづくものって 辛い子には辛いんですよ。想像以上にね。 理系の子に多いですね。 文系の子は慣れているのか、腹をくくっているのか、 意外とこなしていくんですけどね。」 そうなんだ。 そんなもんなんだ。 でもなんつーか、 単調なのがダメならダメなりに、工夫して習得できないものなのかしら? アメリカ行くとか(そこまでするのか) バックパッカーで(金は出さないのか) 何かべつの方法はないものか? そう考えていたら イケメン先生が言った。 「あの単調な、というか、同じことの繰り返しに思える授業に 耐えきれずに辞めた子もいます。」 えー。辞めちゃう子もいるんだ。 辞めてどうするんだろう・・・。

レビュー

(5)

まだレビューがありません

お受験

Amebaでスキルを売り買い

App StoreでREQUをダウンロード
Google Play StoreでREQUをダウンロード