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冬恋⑫

視界がゼロになりスノーモービルを降りて、しばらく立ち往生している。 全身が限界まで冷えてきた。 これじゃ、隆二を探し出す前に自分がくたばっちまう。 ヘルメットも借りてくれば良かったな。 荒れ狂う強風と雪で目も開けにくい。 どこか…風が緩むまでどこか身を隠せる場所があれば。 「あ、そうだ!コーヒー持ってたんだ」 地面に座り込んで背負っていたリュックを下ろして雪を払いのけ、中からポットを出した。 手袋を口で咥えて外し、それを太ももの間に挟み、震える手でカップ型のフタを開けてコーヒーを注ぎ入れた。 冷たくなってる… 余計に寒さが増してきた。 そして猛烈な眠気が襲ってきた。 こんな所で眠ったら… アイツを助ける前に、俺がくたばってどうするんだ… 必死に頭を左右に振って睡魔を振り払う。 びゅうううう… 「あっ…‼︎」 風にあおられてカップが飛んでいき、手を伸ばした時に太腿も開いて手袋まで吹き飛んでしまった。 「…やべぇな、俺も」 冷えたコーヒーをポットのまま飲み干し、リュックに戻してから防寒ジャンバーのポケットに両手を突っ込んだ。 目を細めて四方を見渡す。 一ヶ所だけ、ぼうっとオレンジの灯りのような物が見えた。 「建物?…いや、幻覚か」 待て、広臣… このまま、なすすべも無くここで遭難するくらいなら… スノーモービルもこの視界じゃ危険だ。 「そうだ!電話…」 ジャンバーの内ポケットからiPhoneを引っ張り出して、隆二の番号に掛けるがやっぱ繋がらない。 こんな自然の脅威の中じゃ、役に立たないな。 充電はたっぷり残ってる。 立ち上がってスノーモービルを探ってみた。 アンダーシートボックスが取り付けてある。 ここにiPhoneを入れていこう。 助かったらGPSを利用してスノーモービルを探せばいい。 フードをしっかり被り直して、白い空間を一歩一歩オレンジの灯りに向かって歩き出した。

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