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その1 2000年、春 ~行き場がなくて空を仰いだ~

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4年生大学の文学部卒 という どうにもこうにもつぶしのきかない学歴を引っ提げて 私も一応、就職活動なるものには参加をした とりあえず説明会にも行ったし とりあえずエントリーシートも書いた 確か 子供服の会社が一社 それから酒関係の会社数社 子供服の会社の説明会で覚えているのはひとつだけ なぜコマーシャルに日本人ではなくて 外国人の子供を使うのか という 就活生からの質問に対して 会社のお偉いさんが 日本人ではダメだということではないんです ただ、どういうわけだか外国の赤ちゃんの方が表情が豊かなんですよ と笑いながら答えていたこと その時は へえ そんなもんかね と たいした感想もなかったけれど あれから20年経ってもまだ忘れていないということは (すでに他の多くのことが忘却の沼に埋もれていることを思えば) それなりに私の中に残る話ではあったのかも知れない で 20年後の今なら思う 日本人の子供だって表情豊かだよ と 酒関係の会社の数社は やたらと熱い社風にあこがれて エントリーシートを書いた で そのエントリーシートがなんらかの審査を通って 更に社に出向くという段になって 途端に熱が冷めた 別にそこまで酒が好きなわけじゃない そこで成し遂げたい何かがあるわけでもない   そこへ足を運ぶに至るまで 私の情熱が持続しなかった それで 私の就職活動はあっけなく終わってしまった 大学4年生が本当に終わる2月か3月頃 求人誌を見て適当に応募する 母と自分にそう告げて 私は ほとんど着ていないリクルートスーツを脱いだ 時は2000年ちょうど 超就職氷河期 必死に活動してる子たちの未来だって 全然決まってなかった 諦めではなかった 何の夢もない自分に対する多少の憐憫と エネルギーの矛先さえ定まってしまえば 私はかなり有能に働けるのに というじれったさ 22歳の私は ここはもうお前の居場所ではないと 学生という世界から背中を押されているのに ではそこへ、という これからの行き先がなく どうしたもんだかね と 空を仰いでいた

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