第二回 楽器の構え《前編》
ヴァイオリン、ヴィオラ奏者にとって、楽器の構えの悩みはつきものです。 私も、はじめの10年は楽器の持ち方について悩み続けました。どんな書物 を読んでも、誰に訊いても解決できない悩みでした。 一般的に言って、「楽器の座りが悪い」「楽器が重い」「楽器がすべり落ちそう」という不快を感じることは、ヴァイオリン・ヴィオラを奏者にはおなじみのことです。 熟練の奏者でも、楽器を構えたあと、不安げに何度も顎を押し付けたり離したりする姿はよく見られます。 楽器の構えの良し悪しは、演奏のしやすさに大きく影響するばかりではなく、それが原因で身体を痛めることにもつながります。 良い構えを身につけることは、そのようなことを予防するためにも大切なことです。 皆様への良いニュースは、カトー・ハヴァシュ先生の考案された素晴らしいエクササイズがあるということです。 楽器の構えに悩んでいるなら、「こうしてはいけない」「ここが力んでいる」と分析するだけでは不十分です。 なぜなら、その時「あ、そうか」「なるほど」と思うかもしれませんが、演奏に戻れば元に戻ってしまいます。 それに毎回弾きながら「これはダメ、ここを脱力」などと気にかけることは現実的ではありません。 だから、私がご提案するのは、「はじめからやり直す」ことです。 つまり、これまでのやり方を一旦捨て去って、ご一緒にハヴァシュ式エクササイズを実践してみましょう。動画付きなので難しくありません。 一旦エクササイズのやり方を身につけると、いつでも構えの心地悪さをリセットし、自分で矯正することが出来ます。 私自身も、皆さんにこうしてお教えするぐらい理解しているからといって、もうしなくてよい訳ではありません。折に触れてエクササイズをして、力みをリセットし、構えを矯正しています。 ハヴァシュ先生もよくおっしゃっていました。「”ニューアプローチ”のエクササイズは、出来たらもう終わりじゃないのよ。もし私が演奏に復帰するとしたら、必ず毎日やります。」