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朋美と洋一

短編の恋愛小説でございます。恋の逃避行をシアトル、上海、ニューヨークなどの、美味しく、お洒落なデートと共にお楽しみいただければ幸いです。還暦間近の現在、長年の夢だった単行本の出版に挑戦中です。350ページ以上の小説を書くのは至難の業ですが、何とか成し遂げたいと奮闘しております。こちらは13,000字ほどです。朋美と洋一の山頂のクリスマスへの旅、お付き合い頂けますと幸甚でございます。

1 馴れ初め シアトルのホテルの一室で洋一は恋人が訪れるのを待っていた。約束は午前10時だった。「コン、コン、コン…」っと、遂に待ちわびたノックの音がした。「カチャッ」とオートロックをはずす音がつづく。綺麗にセットされ、ハイライトを帯びたアップの髪が艶を振り撒く。カールで垂らしたおくれ髪が絶妙のアクセントとなり、洋一をあっという間に魅了する。黒のドレスが彼女の妖艶さを引き立てている。やはり朋美は最高に美しい。 彼女とは4年前に共通の友達のホームパーティで知り合った。初見はと言うと、「こんな可愛い子は観たことがない」。20名弱が犇めくパーティ、彼女と話せたのは帰り際のほんのちょっとだけだった。初対面の印象は「コロコロ笑う人懐っこい子」。「もっと話していたい」、本当に洋一は心からそう思った。ちょっと蒸す夏の夜だった。それから再会の機会は1年程なかった。ひょんなことから、別の共通の友達と朋美を交えて、スポーツバーでハッピーアワーとなった。仕事帰りの彼女はスーツ姿で現れた。 久しぶりに会った朋美にはどこか憂いの影があった。洋一は魅力と魅惑を感じた。皆でワイワイとダーツゲームに興じた。罰ゲームはウォッカのショット。彼女は意外と酒に強かった。底なしに楽しんでいる裏に彼女の無理を感じた。別れ際にはすっかり魅了されている自分に洋一は気付いていた。朋美の妖しく光る視線の中にも十二分に自分に対する好意を感じていた。そんな折、嬉しくもフェイスブックが繋がった。 洋一は当時、財閥系の商社でバイヤーとして活躍していた。すでに部長職にまで登りつめていた。その関係で、米国の様々な都市と、時には世界の主要都市と、東京との間を頻繁に往復していた。朋美はシアトルに在住である。ワシントン州立大学の言語学の研究者として、また、財界や政界の要人の通訳として一目置かれていた。フェイスブックで連絡し合い、洋一は東京からの手土産を届けることで再会を取り付けた。 シアトルに戻り、馴染みのスポーツバーで二人は再々会した。朋美はまさか二人だけとは思わず、ちょっと戸惑っていたようだ。手土産のお酒とスィーツを渡し、ダーツゲームを楽しみ、再び打ち解けていった。酔いも手伝って、洋一は思い切って誘ってみた。 「日本の食材も買ってきたので、僕のアパートでごはん食べませんか?」 「僕、料理にはちょっと自信あるんです」 「どうしよっかな~」と暫し戸惑う朋美。 「お酒も美味しいのもっとありますよ」と洋一ははにかむ。 「じゃ、行っちゃおうかな~」と朋美も内心、博識で紳士的に振る舞う洋一に惹かれていた。 何を作ったのか、本当に食べたのかは思い出せない。だがそこで、彼女の憂いの謎が解けた。彼女はアメリカ人の夫と別れたがっていたのだ。彼はIT系で成功しており、中々の暮らしぶりだった。だが、朋美は若気の至りで結婚したことを後悔していた。結婚して分かった夫は、完全な束縛型だったのだ。朋美は自分の自由を取り戻そうとしていた。DVも一因であったようだ。しかしながら、夫の同意が得られず、苛まされていた。優しい彼女は円満な解決方法を模索していた。朋美の夫は別居は許したものの、離婚だけは頑なに拒ばんでいた。 洋一はと言うと、これが丁度また、離婚の調停中だった。アメリカ人の妻と2人の子供たちはセントルイスで祖父母と共に暮らしている。こちらはやっと財産分与が終わり、同意が得られ、弁護士からの書類待ちの状態だった。その後は裁判所に出頭し、一件落着となる。そんな身の上話をお互いに、酒に任せて吐き出していった。いつの間にか二人はしたたか酔い、熱く見つめ合っていた。翌朝目覚めた時は、恋人同士の関係になっていた。朋美が28歳、洋一が44歳の時だった。

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